■- 報告 − 2009年IBITA会議報告(教育セッション・ワークショップ詳細版)

平成21年10月  森之宮病院 作業療法士 小室幸芳




 2009年9月24日〜26日、オランダのハーレムのHotel Zuidで成人部門の国際ボバースインストラクター会議(IBITA)が開催されました。これについて報告いたします。
 出席メンバーは紀伊克昌、新保松雄、大槻利夫、伊藤克浩、石田利江、赤松泰典、山本伸一、土井鋭二郎、高村浩司、保刈吉秀、野頭利行、寺澤 健、小室幸芳(敬称略) です。

 今回の会議参加者は155名でした。1日目と2日目は教育セッションでした。1日目は講演が中心でした。その中の3演題を報告します。

 1つ目は英国のDr Sheila Lennon女史の講演でした。講演の内容はボバースアプローチの有効性を研究した膨大な文献調査でした。雑誌Stroke Jan 29,2009に 「The Effectiveness of the Bobath Concept in Stroke Rehabilitation. What is the Evidence?」として掲載されている内容でした。結論としては、 「ボバースアプローチは他のアプローチより有効であるということは示されなかった。しかし多くの研究は方法論的な欠点があり、更なる調査が必要」ということでした。

 2つ目はオランダのPTの大学教授 Gert Kwakkel氏の講演でした。内容は「脳卒中リハビリテーションにおいて脳の可塑性に働きかけるアプローチの効果は 発病3日目から8週間までであり、それ以降は課題指向型アプローチを代償を許してでも行うようにすべきである」というものでした。

 3つ目はオランダのシニアインストラクターPT Jos Halfens氏の講演で現在オランダで行われているNeuro Rehabilitation Courseの説明でした。オランダ では現在、ボバースという名称の付いたコースは行われておらずそれに代わってこの新しいコース「Neurorehabilitation/Stroke」が3年前より行われてい るのです。今回の最終日のGeneral Meeting に向けて布石でした。

 2日目の午前中はワークショップで1日目のJos Halfens氏が説明したコースを各国のIBITAメンバーに体験してもらおうというものでした。参加者全員を 4つのグループに分けて行いました。私の最初に入ったグループでは患者のVTRを見せ症例提示がありました。テーマは立位・歩行でした。
 患者は56歳の女性 で橋出血、左片麻痺の患者でした。発症から4週後彼女は靴紐を両手を使って結べ、杖を使って監視下で歩行可能でした。彼女の次の4週後の治療ゴールは何 なのかという質問がありました。その質問に対してグループに分かれて話して提示された3つのゴール(Trilemma 1,2,3にそれぞれ治療目標と治療内容が含 まれている)から選んで発表するというものでした。治療目標と治療内容は提示されたtrilemma(三者択一)から選ばなければならないしそれらを組み合わせ ることはできません。治療目標、治療内容を公式化しようとする意図が見られました。
 グループに分かれて話し合いはしましたが発表時にイギリスとドイツ の混合グループからこれはボバースではないという異論が唱えられワークショップはまとまらずに終わってしまいました。後半のワークショップは上肢につ いてでしたが参加者からこのワークショップに対しての意見で終始してVTR提示すら行われませんでした。後で聞いてみると私が入らなかった他の全ての グループも同じような顛末だったようです。

 午後からはIBITAメンバーによるいろいろなリサーチなどの発表でした。その中でオーストラリアの基礎講習会インストラクターのKim Block女史が 「The Bobath Concept in contemporary clinical practice 現代の臨床実践におけるボバース概念」と題して講演をしてくれました。
 内容はICF、Analysis of movement、Movement dysfunction and recovery、Key aspect of clinical practiceでした。その中で 「ボバース概念は運動の協調的な連続性を生み出すために姿勢コントロールと課題遂行(Task performance)と選択的運動の統合を特に強調している。 これらの要素は脳卒中後の運動回復と機能を最適化するために重要であると考えられている。加えて運動コントロールと運動学習への 感覚入力の寄与はボバース概念の鍵となる中心的要素である。」とまとめてくれました。

   3日目はGeneral Meeting が朝から夕方まで1日中行われました。会議の始まりで新保松雄氏が上級講習会インストラクターとして、 鈴木三央氏が基礎講習会インストラクターとして承認されました。会議の内容は選挙、規約改正などが中心でした。今回、IBITA議長のBente 女史が 任期満了となったため後任にChampion女史が選出されました(写真)。
 また日本から発展途上国支援委員として古澤正道氏が選出されました。 また今回最も重大な動議がオランダグループから提出されました。先ほども述べましたがオランダは3年前より自国で基礎講習会のタイトルを 「Neurorehabilitation/Stroke」へと変更して実施しています。ヨーロッパではボバース治療が行われるとそれに対して保険料は一般の治療費 よりも高く支払われているのですが、オランダでは世界的にはEBMとしてまだ認められていないボバース治療に対して多くの医療費を支払ってい たことに批判が高まっていました。この結果リハビリテーションDrらの指導の下にボバースのインストラクターはボバースの基礎講習会から内容 と「ボバースという名前を使用しない」名称を変えた新たな講習会へ変更していった経過があります。この新たな講習会をIBITAの基礎講習会と認 めてほしいという動議でした。採決ではスイスグループからの修正案などもありましたが最終的にはこの動議は否決されました。今後のオランダ グループの動向が注目されます。

 最後に昨年のIBITAでインストラクターの教育システムを検討するワーキンググループがつくられ日本から紀伊先生が選ばれました。来年のブラジ ルで開催されるIBITA会議でその教育システム案が提出され決定されます。今までよりもさらに厳しくなりそうです。今後の日本のインストラクタ ー養成に大きく影響すると考えられます。今回、初めてIBITA会議に出席してボバースセラピストは世界に向けてEBMをもっと出していかなければ ならない事を痛切に感じました。