会長コラム2013年11月

 「麻痺側の不使用は医療従事者によって作られる?」



 11月は理学療法県士会や他研究会で脳卒中後遺症をお持ちの方に対する起居動作の実 技指導を行う機会が多くありました。

 その中で麻痺側への寝返りや麻痺側からの起き あがり誘導の実技を指導した際に感じたことですが、若い療法士の方が学校教育や職 場でこれらの誘導方法をあまり教わっていない事に驚きました。

 これはあくまで想像ですが、その理由に回復期リハビリテーション病棟における「日常生活機能評価」が 少し関わっているのではないかと私は思っています。「日常生活機能評 価」は回復期リハビリテーション病棟の基準を取得するために必要な評価ですが「看護必要度」が元々の 指標なので、「どのような方法でも看護師を呼ばずに自立できれば点数が変わる」という 性質を持っています。

 すなわち、麻痺側を使わずにベッド柵を引っ張って寝返り・・非麻痺側上肢でベッ ド柵を引っ張って非麻痺側に起きあがり・・非麻痺側につけたU字柵にもたれかかるように立ち上が り・・非麻痺側に置いてある車椅子に倒れ込むように乗り移る・・。
 そして、それらが監視無しで出来るようになれば点数が変化します。もちろん安全 に病棟生活が自立できるようになることはとても重要な事ですが、PT・OTが9単位(ST 処方が無い症例)3時間の全てを使ってその様な練習ばかりしていたら誰が麻痺側 上下肢や体幹の機能回復に対してアプローチをするのでしょう。  もし、急性期から回復期の終わりまでの約3ヶ月から5ヶ月の間このようなADL訓練ばかり行われていたとしたら、 麻痺側の不使用は医療従事者によって作られるのでは・・とさえ思えます。

 ここからは研究会会長としてというより理学療法士としての意見ですが・・少なく とも理学療法士は運動療法を用いて積極的に麻痺側に関わり、麻痺側、そして体幹機 能の回復に努めて欲しいものです。1996年のNudo論文以降、麻痺手にアプローチされ る機会が増えたことは嬉しい限りですが、麻痺側上肢も肩甲帯も骨盤周囲、そして股 関節・下肢も使わなければ弱化するし身体図式から消えていきます。

 最近フェイスブックで当事者の方々から「麻痺を治療して欲しくて回復期リハビリテーション病院に入院したのに麻痺側上肢にはほとんど触って もらえず非麻痺側でのADL訓練ばかりさせられた」という苦情をよく聞きます。ADLの自立を促す練習はもちろん重要で、少しでも麻痺側が参加できるような それ自体(ADL練習)の質を高めて行くことも大切ですが、少しでも当事者の方々のニーズに答える様な対応が必要だと思っています。

 



日本ボバース研究会 会長   伊藤 克浩
 

平成25年11月30日

   
 


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