会長コラム2013年2月

「協業」



 2月9日は関東甲信越静ブロック成人合同研修会で久しぶりに旭川医科大高草木薫先 生(写真左)の話を聞くことが出来ました。前回は6野から脳幹網様帯の姿勢制御機構への下降 路の重要性を強調されていましたが、今回はそのプログラミングの為に重要な入力系 とボディスキーマの事を強調されていました。それにしても二足直立歩行していた日本猿 の動画には驚きました。立脚後期があり、骨盤が起きていました。高草木先生のお話によるとトレーニングを長く行った 猿だということでした。関節構造的に無理だと思っていたので考えを改めなければなりませんね。

 2月11日・12日は当院でのSTインフォメーションコースに参加させて頂きました。  担当実技では「ハンドリングの基礎」ということで頭頸部や上部体幹にアプローチ するとき、セラピストが触れたところから同時進行的に骨盤周囲や下肢の活動を感じられるように 一緒に練習しました。  座位で治療する前に立位から座っていく過程の中で伸展を失わない(前庭システム のスイッチを切らずに・・)介入も一緒に練習しました。トランスファーの時にこれ が実践できると座位での治療が成功しやすくなります。難しい実技でしたが皆さん一 生懸命トライしてくれていました。

 治療実習では少し重度な左片麻痺症例を一緒に診させて頂きました。頸部は側屈が 強く、声も小さく早口で「麻痺手が痛い、腰が痛い」とネガティブな発言が多い方で した。
 姿勢の取り方から痛みと恐怖・不安等の辺縁系に関わる不適応が混同してしまう要 素が主体ではないかと感じたので、受講生さん達と一緒に姿勢の安定を促しながら発 声と呼吸、頭部の正中位オリエンテーションに介入していくと、帰られる前には声も 大きく、頭部も正中に、そして「来て良かった」と言ってくださいました。 治療実習二日目は最初から姿勢も安定し、受講生さんたちだけで呼吸や発声へのアプ ローチが行えました。

 最後のまとめで受講生さん達に伝えさせていただきましたが、咀嚼・嚥下や呼吸・ 発声には脳幹の関わりが深い。だからこそ辺縁系、パペッツ回路等の影響が大きいの です。一日目来られた時はネガティブな発言が多く、頚部周辺と非麻痺側上肢を固く して逃避的な姿勢を取られていた症例が、二日目は 安心して過剰な姿勢固定から解 放され、自ら発話し、そしてニッコリと野球の話やバレーの話をされていたのは印象 的でした。

 中枢神経疾患に対するアプローチでは専門分野はきちっと確立させながら、縫い合 わせるようなシームレスアプローチ(協業)が重要となります。特に療法士間では、 基本概念を共有しながらお互いの専門性をきちんと理解することが重要です。

 嚥下や摂食機能にとって安定した座位姿勢と上肢の選択的な道具操作能力は重要で す。例えば汁物を食べる時に口(頭部)は前方に向かわなければなりません。その時下 肢や体幹が適切に支えてくれる様な姿勢調整が起こらないと、上肢や頸部が過緊張に 陥る、あるいは非対称の強い姿勢で食物を取り込んだり咀嚼したりしなければならな くなる可能性があり誤嚥や食べこぼしに繋がりやすくなります。
 座位姿勢の安定に取り組むのは理学療法士かもしれませんが、言語聴覚士の方もこ れらの事を知っておかなければなりませんし、もちろん理学療法士も食事動作におけ る下肢や骨盤周囲、体幹の姿勢調整について知っておかなければなりません。 「協業」ですね。そして作業療法士はスプーン操作が嚥下に与える影響を知っておく べきです。釈迦に説法ですが視覚と共に触運動覚情報から食材を知覚する事で唾液の 量が準備されたりします。

 これらの協業を研究会では長年にわたって先駆的に実践してきました。ニューロリ ハビリテーションが常識となりつつある昨今、臨床現場でのこの「協業」の重要性を さらに訴え続ける事が必要だと感じています。


<新刊の紹介>

 ●リハビリテーションのための神経生物学入門

 森岡周著 協同医書出版社 3,800円

 我が盟友森岡周氏の新刊。姿勢制御や歩行についても参考となる一冊。二足歩行の章には当研究会大槻利夫上級インストラクターの論文引用もあり。神経科学の 入門書としては非常に出来の良い一冊です。


 ●ボバースコンセプト実践編

  ベッティーナ・ペート・ロールフス著
 新保松雄・大橋知行 (監修) 5.040円

 −基礎・治療・症例−

 バルセロナIBITAAGMでお世話になったIBITAシニアチューターベッティーナ女史の新刊。症例も交えた実践的な一冊。


日本ボバース研究会 会長   伊藤 克浩
 

平成25年2月13日

   
 


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