会長コラム2012年8月

 「没頭」



 今月は一週目にJBITA会議(日本ボバース講習会講師会議)と教育セッションが東 京順天堂医院で開催され、基礎講習会と上級講習会が当院で開催されました。そして 25日から二日間は当院基礎講習会修了者によるブラッシュアップ研修会も行われまし たので、8月はまさに「ボバース概念に基づく神経リハビリテーションアプローチ」 に没頭した一ヶ月でした。

 8月3日〜5日のJBITA会議では主に9月にベルギーで開催されるIBITA(国際ボバー ス講習会講師会議)AGM(定例会議)の議案について話し合われました。前にコラム に書いたオランダの講習会事情は現在も続いていて、オランダのIBITA会員は休会扱 いになったままです。オランダの「神経リハビリテーション講習会/ストローク」を IBITAで認めて欲しいという動議が今年も提出されるようです。心情的にはなんとか してあげたいとは思うのですが、講習会の中心的研究者が「脳卒中 者の麻痺へのアプローチは3週間しか効果が無く、残りは課題試行型アプローチ (ADL動作をくり返し練習する)以外に認められるものは無い」と明言されている以 上、ボバース概念というより日本の回復期リハにおける麻痺側治療を完全否定する理 論ですから賛同する事が難しい動議となります。

 5日の会議終了後に紀伊先生と電車で山梨に戻りました。紀伊先生が同行したのは野 頭氏(諏訪赤十字病院作業療法士)のIBITA成人中枢神経疾患基礎講習会インストラ クタートレーニングにおけるファイナルアシスタントシップの3週目が行われるから です。当院IBITA成人中枢神経疾患基礎講習会3週目は8月6日から10日まで開催 され、そして野頭氏は無事紀伊先生の評価をクリアしてインストラクターとして認め られました。あまり知られていないことですが野頭氏は私の元同僚で、当院に勤めて いたときにスキーを教えてくれたりした私の友人でもあるので、インストラクターと して認められた事はとても喜ばしい事です。IBITAの認定指導者になるには想像を絶 したトレーニングと重圧の中での治療デモンストレーションの評価等をクリアしなけ ればなりません。外国で講習会を受ければ指導者になれるというものではないので す。ティーチャーではなくインストラクター、「教える」のではなく「伝える」事の 出来る指導者を養成するのがIBITA指導者養成ルールです。私は1987年から12年間ト レーニングを受けて基礎講習会指導者となり、5年の実践を積んで(IBITAルールで5 回の基礎講習会での指導が必須)上級講習会指導者のトレーニングを開始後5年間で 承認されました。実に臨床経験29年のうち実践期間を含め、22年間指導者トレーニン グを受けています。身をもって厳しさを知っているからこそ友人である野頭氏の合格 は自分のことのように嬉しかったです。ほんとうにおめでとう。 もちろん私のトレーニングは現在も継続中です。脳科学に関係した仕事をするという ことは毎日が発見の連続で、日々情報収集と勉強、そして我々セラピストはさらにそ の知識を臨床に繋ぐための努力をし続けなければなりません。例えば最近、英論文で 発表された伊佐先生のC3-C4PNs(固有脊髄路)が指の精緻運動に関係しているかもし れないという報告は、私が講義で話してきた「皮質脊髄路や新運動野の直接性」を覆 す内容です。最新の神経科学を解釈して、そして臨床に結びつける作業をしなけれ ば・・「今ここにない未来は自分で創る」(月曜夜9時 リッチマン,プアウーマンよ り)ですね。

 ブラッシュアップ研修会には卒業生が35人前後集まってくれました。山本学術局長 と共にデモンストレーション治療とクリニカルリーズニング、そして二日間の治療実 習を行いました。みんな「言い訳をしないセラピスト」(紀伊先生に教わった言葉で 私の座右の銘、講習会でいつも伝えている言葉)として頑張ってくれているようで頼 もしく感じました。

 翌週の月曜日からは私が一人で行う初めてのIBITA成人中枢神経疾患上級講習会でし た。受講生は10名と少なくし、5グループ全員がワークショップで発表するという濃 密な症例検討を中心とした講習会を試みさせて頂きました。「リーチと移動のクリニ カルリーズニング(症例検討)」というテーマで行い、対象者の「第一印象」を大切 にし、何故そう見えるのか、姿勢や表情、目の動き、声等から辺縁系や脳幹機能も含 めたクリニカルリーズニングを行うことを目指しました。少人数というのは距離感が 近くて全員の考えや日頃の臨床での悩みを聞くことが出来ます。昼食も講師控え室で 毎日一緒に食べました。ただ、夕方の治療実習フィードバックを5組回るのは大変 で、毎日全てのブループを回りきれなかったのが少し心残りでした。

 今年度も9月が終われば半分過ぎることになります。9月・10月には(公社)日本理 学療法士協会関東甲信越ブロック学会のシンポジストや、(公社)日本理学療法士協 会全国学術研修会のセミナー講師等、「没頭」から一転して講演活動等が増えていき ます。気合いを入れ直して頑張らなければ、そう・・言い訳をせずに・・。

 

日本ボバース研究会 会長   伊藤 克浩
 

平成24年8月31日

 
 


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