日本ボバース研究会 会長コラム


会長コラム2010年11月

「Nigel Lawes博士の運動学習講演会とシンポジウム」



 11月6日(土)は大阪でアイルランドTeaching and Research in Anatomy所長 Nigel Lawes博士の運動学習講演に参加させて頂いた。まだ原著論文を読んでいないが私の解釈から概略を報告する。

・ 基底核の関わる運動学習は遺伝子の影響を受け、DARPP-32 gene遺伝子を 持っている人は成功を褒められて学習する。
・ DRD2 gene遺伝子を持っている人はD2受容体が増加するので失敗から学ぶ。
・ 小脳の運動学習は予定していなかった活動で(例えば10段あるはずの階段が9 段だった)オリーブ核のスイッチがオンとなり機能する。
・ 小脳が関わる自動的(暗黙的)な運動の学習には休息が必要で、その休息は 寝ていても起きていても良い。
・ 「注意が必要だけど簡単な課題」は寝ている間に再学習が行われるので睡眠 が必要。
・ 「注意が必要で複雑な課題」の学習には休息が必要だが線条体が関わるので 起きている事が必要。

 褒められて学習するタイプと失敗から学ぶタイプは遺伝子で方向付けられていること や、休息や睡眠が学習に影響を与えるという事はJulien Doyonらの論文(※)から 知ってはいたが研究等の裏付けを示していただいてさらに理解を深めることが出来 た。

 11月7日(日)は東京ビッグサイト(お台場)にてシンポジウム「中枢神経疾患へ のリハアプローチの再構築」にシンポジストとして参加した。900人の参加者があり 盛況であった。
私はボバースコンセプトと皮質下の運動、姿勢制御について話した。次に畿央大学教 授森岡周先生が認知神経科学、運動学習、そして皮質下の話について講演。

 昼に休憩を取り、午後からは兵庫医療大学の佐野恭子先生がCIMTについて講 演。そして最後に埼玉医科大学保健医療学部教授の高倉先生司会でパネルディスカッ ションを行った。佐野先生は道免先生とCIMTを日本に導入した際のいきさつや、 最近の動向、課題などをお話しされた。先生自身も両手動作をシェイピング(上肢の 課題)に含むかどうかを悩まれており、また、CIMTを実施する施設によってはハ ンズオフ治療に対する口頭でのフィードバックが徐々に行わなくなって自主トレ感覚 になりつつある事への危惧を感じられているようであった。
 シンポジウム終了後に佐 野先生が「CIMTを行う中で、手の治療を行って姿勢が安定した症例がいたが、伊 藤先生の講演を聴いてちょっと腑に落ちて勉強になった」とご意見を頂き、皮質下機 能の重要性に賛同を頂けた。

 私自身も佐野先生のCIMTの説明を聞いて「口頭で正しいフィードバックにより 修正できて運動学習に繋がる症例、そして不使用が問題となる症例はCIMTも含め たハンズオフ治療で、そして姿勢コントロールに対してハンドリングで介入するアプ ローチが必要な人や、CIMTでは適応外となる人にはボバース概念に基づく神経リ ハビリテーションアプローチ等用いて、またはそれらを組み合わせて、必要な時間 (CIMTで言うなら4〜5時間)の治療を保険点数に関係なく行うことが出来れ ば、より良い結果を出せるのではないだろうか、という感想を持った。

 いずれにしろ研究会会員の皆さんには食わず嫌いの料理評論家にならないようにし て頂きたい。クリニカルリーズニングにより目の前の症例に最も適した対策を取れる ように、神経科学以外の装具や筋力トレーニングも含めた様々な事を学んで欲しい。の こぎりだけでは家は建たない。

Nigel Lawes:
University of Limerick, Graduate Medical School
2001-2008 Senior Lecturer of Basic Medical Science George's University of London
1994-2001 Senior Lecturer in Neuroscience, University of East London
  共書「Understanding Neuromuscular Plasticity」Edward Arnold, 1992
  共著「Physical Management in Neurological Rehabilitation」Elsevier Mosby, 2004

Julien Doyon:
「Contributions of the basal ganglia and functionally related brain structures to motor learning (2008)」
「Motor sequence learning and movement disorders (2008)」    

日本ボバース研究会 会長   伊藤 克浩
 

平成22年11月11日

 
 


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