会長コラム8月

「アクティブさと網様体脊髄路」

 8月は当院が最も忙しい月である。最初の1週間は紀伊先生との成人片麻痺上級講 習会、3週目と4週目が成人片麻痺基礎講習会だ。

 上級講習会ではProgress in Brain Reserch,Vol.143 CHAPTER 25 "Cortical and brainstem control of locomotion"Trevor Drew, Stephen Prentice and Benedicte Schepens から講義を持たせてもらった。 Clinical Neuroscience Vol.27 特集Motor system-What's classic and what's new? の高草木先生の網様体脊髄路に関する最新知見も交えてCPGやリーチの ニューロンネットワークに皮質がどう関わっているかという話をさせてもらったのだ が、まとめていて自分自身にも勉強になる部分がたくさんあった。

 その一つが脳幹網様体は姿勢コントロールの筋緊張に関わる役割を果たしているこ とは周知の事実だが、(主にPPN/脚橋被蓋核からの下行路)脳幹網様体は霊長類で は6野(前運動野・補足運動野)からの入力を非常に多く受ける。すなわち随意運動 との関係で言えば、例えば「あのコップを取ろう」と企図することが6野から運動野(4野) と脳幹網様体に信号を送り、運動野から皮質脊髄路を通じて手先を動かす命令が脊髄に行くのと同時進行的に、あるいは先行して脳幹網様体によって姿勢コントロールが 準備されると言うことになる。

  このエビデンスからすると療法士が他動的に手をコッ プに誘導するだけでは姿勢コントロールに必要な情報にはならず、対象者がコップを よく見て「取ろう」と思うことが重要になる。

 アクティブであることがボバースコン セプトに基づくアプローチにとって重要であるということは講習会を通して教えてき たことだが、神経生理学的な裏付けを加えて学ぶことが出来ればさらに納得のいく事 である。

 ちなみにこの脳幹網様体は青班核ニューロンからの伝達物質に影響を受ける が、青班核ニューロンは報酬に関わる事によく反応すると言われている。すなわち 「うまくいった」とか、快適であるという結果につながることがまた姿勢コントロー ルに影響を与えるのである。

 アクティブに対象者自身が動いていき、それが成果につながる・・ボバースコンセ プトの真骨頂であるが、「アクティブさ」「快適さ」は数字化しにくい部分でもあるのが難しいところだ。

日本ボバース研究会 会長   伊藤 克浩
 

平成21年8月14日



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